暖かさと温もりと1
「こんちは〜」
いつものように扉を開けたエドワードは、部屋の主の姿が見えない事に首を傾げた。
中尉は、『大佐は執務室よ』と言っていのだ。
「どこに行ったんだ?」
報告書を手に、ロイの机に近付く。
その時、机の横から見慣れた青い物が見えた。
慌てて駆け寄るエドワードの鼓動が早鐘を打つ。
そして見えたのは、床に倒れたロイの姿だった。
「大佐!」
急いで側に膝を付いて様子を伺う。
「・・・寝てる?」
ロイの顔色は良くないが、安らかな寝息をたてていた。
「・・・なんで、こんなとこで寝てんだ?」
床に突っ伏して寝ている今の状態は、普段のロイからは考えもつかないことだ。
エドワードは、どうしたものか迷ったすえ、とにかく起こそうと声を掛けた。
「大佐、起きろよ」
「・・・」
「こんなとこで寝てたら体に悪いだろ」
「・・・」
返事どころか、起きる気配さえない。
「おい、大佐ってば!」
少し声を大きくして、揺すってみるが反応は返ってこない。
「どうしよう・・・」
暫く見つめて考えていたが、良い手立ては浮かんでこなかった。
「・・・中尉を呼んで来るほうが良いかな・・・そうだよ!中尉ならなんとかしてくれるじゃんか」
自身の言葉に納得したように頷くと、中尉を呼びに行こうと立ち上がった。
しかし、立ち上がりきる前に腕を掴まれて倒れそうになる。
それをなんとか踏み止どまり、腕を掴んだ相手を睨み付けた。
「何すんだよ、あぶねーだろ!」
睨み付けられたロイは、腕を掴んだまま覚束のない瞳でエドワードを見つめていた。
「だいたい、何時から起きてたんだ!」
「・・・鋼の?」
「なんだよ!」
「これは夢かね?」
「はぁ?」
「違うのか?」
ひょっとしなくても、寝ぼけてるよな・・・司令官がこんなんで大丈夫かよ
常にはない珍しい姿に、エドワードはじっと凝視していた。
「鋼の」
「わぁ!!」
ロイが名を呼ぶと同時に掴んでいる腕を引き寄せたので、エドワードはそのままロイの胸に倒れこんでしまった。
「急に引っ張るな!」
「君も寝たまえ」
「・・・あんた大丈夫か?」
ロイの言動はかなり怪しい。
相手をしていては埒があかないため、エドワードは体を起こそうとした。
だが抱き締める力が強くて、身動きさえままならない。
「大佐、離せよ!」
「抱き心地が良いのだよ」
腕の力は一向に緩まない。
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