幸せのかけら



『愛してる』と言えば、思いが伝わるだろうか。
オレが言えない言葉を、たやすく口にする。
それはアンタが大人だからだろうか。

「・・・の、鋼の!」

エドワードは、呼ばれている事に気付いて慌てて相手を見た。
向けられた黒い瞳に、自身の置かれている状況を思い出し、気まずさと恥ずかしさに襲われる。

「あっ・・・何?」
「聞いていなかったのか?」
「ごめん、ちょっと考え事してた」
「何かあったのか?」

ロイが訝しげに見詰める。

「いや、ほんとに考え事をしてただけだから」
「・・・顔色が悪いぞ」

ロイの手が頬に触れる。

「ちゃんと休息を取っているのか?」
「寝てるって」

笑みを浮かべるエドワードを、納得のいかない顔で見ていたロイが呟くように言葉を零した。

「私は頼りにならないか?」
「・・・急になんだよ」
「急ではないさ」

寂しげに笑って、エドワードの傍らに腰を降ろした。

「ここ数日、君は様子がおかしい、なのに聞いても答えない」

エドワードの髪に手を触れると、そっと撫でる。

「側にいる時ぐらいは、君の助けになりたいのだが、頼っても貰えない」

そう言って苦笑を浮かべる。

「・・・頼りにしてるよ」

顔を赤く染めて、小さな声で呟いた。

「別に何か困ってるわけじゃないから」
「しかし、君は上の空だろ?」
「だから、考えごとをしてたんだって」
「私といる時くらいは、私を見てくれないか?」

ロイが困ったように笑う。

「君にとって私は大した存在では無いのかと、哀しくなるだろ」

本当に哀しそうにロイが笑うので、エドワードは焦った。

「そんなはずないだろ!考えてたのは・・・ロイの事なんだから」

エドワードの顔が更に赤くなる。

「言いたい事があるんだ、けど・・・言葉に出来なくて」

エドワードは俯いてしまった。

「言いたい事とは?聞かせてくれないか」

ロイの声が、包み込む様に優しく響く。

「あのさ・・・」

まだ言葉を探す様に、ためらいがちに呟く。そして、おずおずロイへ腕を伸ばし背中に回すと、しがみつく様に抱き付いた。胸に顔を埋めると、ゆっくりと息をはく。

「オレ・・・ロイが好きだよ」

顔を埋めたままのエドワードを、ロイがそっと抱き締めた。
それに安心した様にエドワードの体の力が抜ける。

「ロイ」

僅かに顔をあげると、嬉しそうな笑みのロイが瞳に映った。その笑みにつられるようにエドワードも笑う。

「愛してる」

ロイが僅かに驚いた表情をするが、すぐに敵わないなと笑った。その頬が僅かに染まっていたのは気のせいではない。

「君から、そんな言葉を聞けるとは思わなかったよ」

至福の笑みでエドワードを見詰めると、慈しむ様に言葉を紡いだ。

「ありがとう、私も愛しているよ」

エドワードも嬉しそうに微笑む。
優しい空気が二人を包む。
抱き締める腕に、互いの存在を感じていた。

愛しい人の優しい微笑み、温かな腕。
思いを伝える喜び、心が繋がる安らぎ。
それは、幸せをもたらすもの



あとがき

あぁ・・・いつにも増して訳の分からない文章になってるよ
仲の良い二人を書きたかっただけなんですけどね



Novel-F.A
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