発熱1く
ロイは会議で疲れた体をほぐしながら指令室の扉を開けた。
「大佐、お疲れさまっス」
「あぁ、まったくだ」
「お疲れさまです。エドワード君が来ていますよ。」
「鋼のが?」
「はい、1時間ほど前に」
「そうか、だいぶ待たせてしまったな」
「鋼の待たせて悪かったね」
執務室の扉を開け、中に声をかける。
しかし、返事は帰ってこない。
「鋼の?」
扉を閉めて、いつもエドワードが座っているソファへと近付く。
「すー」
ソファに丸まるようにして眠るエドワードがいた。
その姿にロイから笑みが零れる。
「暫く寝かせておくか」
愛用のコートを手に取りエドワードに近付いた。
コートを掛けようとして手を止める。
「エド?」
エドワードの額には汗が滲んで、顔も赤く染まっていた。ロイは、エドワードの首に手を当てると顔をしかめた。
「ん・・・ロ・イ?」
エドワードがうっすらと目を開ける。
「苦しいか?」
「少し・・・」
「待っていなさい、何か冷やすものを持ってくるから」
「・・・やだ」
「エド?」
エドワードがロイに手を伸ばす。
「・・・だっこ」
「わかった」
不安そうに見上げてくるエドワードに、ロイは微笑みかけ熱を持つ体を抱き上げた。そして、ソファに座り膝に乗せると抱き締めた。
「ここに居るから」
「うん・・・」
髪を撫でて背中を優しく叩いてやると、エドワードが縋るように身を寄せる。
程なくして、エドワードから寝息が聞こえてくる。
「あまり無理をするな」
聞こえないと分かっていて、口にしてしまう自身に苦笑が漏れる。
不意に扉を叩く音がして、意識を戻された。
「大佐、お茶をお持ちしました」
「あぁ、ありがとう」
「失礼します」
執務室に入ったホークアイは、いつもと違う様子に気付くと静かにテーブルにお茶を置いた。
「エドワード君、どうしたんですか?」
「体調が悪かったのだろう、ここで寝ていて熱が出たようだ」
「冷やすものを持って来ましょうか?」
「頼むよ」
「はい」
暫くして、ホークアイがタオルに包んだ冷却剤と肌掛けを持って戻って来た。
「大佐、これを」
「ありがとう」
肌掛けを掛けてやり、冷却剤を首に当ててやる。
それに、エドワードが目を開けた。
「・・・冷たくて・・気持ちぃ」
「寝ていなさい」
「・・・うん」
再びエドワードは眠りに落ちていった。
「中尉、すまないが書類をこちらに運んでくれないか?」
「わかりました」
ホークアイは机から幾つかの書類を束ねると、テーブルに置いた。
「急ぐ書類は、これだけです」
「中尉?」
「それが終われば、お帰りいただいても結構です。」
「わかった」
「早く連れて帰ってあげてくださいね」
「あぁ、ありがとう」
微笑んで退室して行くホークアイに礼を言うと、目の前に置かれた書類に取り掛かった。
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