寂寥感



朝から降り続いている雨は、昼を過ぎても止むけはいを見せない。
アスランは仕事に出かけてしまい、僕はでこの部屋に取り残されてしまったようだ。

戦後の混乱が残る中、共に戦った仲間達は復興や治安維持に力を注いでいた。
僕はといえば、各種システムのプログラムを構築したり、それらのメンテナンスなどをしている。
それらの仕事は在宅で出来るため、僕が外に出る事は少ない。
なにより、僕自身が外に出かけたいとは思わないのだけれど・・・

僕は戦争の後遺症なのか、人と会う事が出来なくなっていた。
会っても平気な人は片手の指で数えられる程で、会いたい人となると一人だけだった。
今の僕の生活は彼に依存していた。
この暮らしに不満があるわけではなく、むしろ彼が居る事に安心していた。

ただ時折、こうして雨の日に一人になると寂寥感が込み上げてくる。
それが、何にたいしてか判らないけれど・・・
失ってしまった事か、この部屋に一人で居る事か、かつての戦友に会うことの出来なくなった僕なのか・・・
考えれば理由なんて幾らでも出てきそうだ。
確かな事といえば、僕らは何かを失ったということだけ。
それは、家族や友人や恋人であったり、国や家であったり。

僕が失ったのは、きっと僕自身・・・
世の中の不条理というものを、何も知らなかった僕。
それは無邪気に幸せでいられた日々、今となっては遠い昔のこと。



「何してるんだ?」

呆れを含んだ声に顔を向ければ、求めたたった一人の人。

「こんな暗い中で何をしてるんだ?」

ゆっくりとした足取りで僕の側まで歩いて来る。

「アスラン、おかえり」
「ただいま」

笑顔で手を伸ばせば、微笑んで抱き締めてくれる。
僕の唯一安心出来る場所。

「で、何してたんだ?」
「ん?別に何もしてないよ、雨の音を聞いていただけ」
「そうか」

問いかけに微笑んで答えれば、アスランが綺麗な微笑で頷いた。
彼の手が僕の髪を撫でるように梳く、それが心地良くて彼の胸に顔を埋めて眼を瞑った。



あとがき

前より少しは長いでしょうか?やっぱり短いですかね;



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