確かな存在
アスランは夜明け前にふいに目を覚ました。
横には幼い頃の面影を残したキラの寝顔。
キラを起こさないように、そっと体を起こしバスルームへと向かった。
暫くして寝室へと戻って来たが、キラはまだ眠っている。
キラの側まで近付くと白い肩が目に入った。
この細い体に多くのものを抱えてきたんだな
そして、今も抱え続けている
苦い思いがアスランの胸に広がった。
何時かキラが潰れてしまうのでは・・・
そんな不安にさえ駆られる。
キラの髪を梳いて、そっと体を滑りこませる。
眠るキラの体を背中から抱き締めると、微かな息遣いが伝わってくる。
はかないけれど、確かな息吹に安堵した。
キラがここに居る
それだけで心が満たされる。
思えば、キラと別れてからというもの世界は色褪せていた。
母を喪ってからは色が抜け落ちたようで・・・
キラと再会してからはキラという光だけ求めていた。
「っ・・・」
その時の焦燥感が甦り胸を締め付け、アスランは反射的に抱いている腕に力を込めた。
「アスラン?」
ふいに呼ぶ声が聞こえて、腕に優しく触れる手を感じる。
「キラ」
名前を呼ぶ声が掠れた。
鳶色の髪がサラリと音をたてて揺れる。
体の向きを変えてアスランの背に回る腕。
キラの瞳がアスランを捕えて優しく微笑む。
「僕はここに居るよ」
囁く声が胸に染込んできて安堵する。
「そうだな」
微笑み返して優しく口付けを送った。
あとがき
失くしてしまうかもって不安は、誰でも持ってるのではないかと
思うのですが・・・みなさんはどう思います?
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