隠しごと3
「痛みはないか?」
「痛くないよ、薬飲んだし」
「薬で痛みを抑えても、怪我が治るわけではないだろう!」
はぐらかすような返事を返すエドワードに、ロイの苛立ちがつのる。
「エド・・・」
「大佐、薬と包帯をお持ちしました」
「あぁ、ありがとう」
ロイが苛立ちに任せて言葉を紡ごうとした時、ホークアイが戻ってきた。
ロイは、薬と包帯を受け取ると、エドワードの側に屈んだ。
「包帯を替えるぞ」
「自分でする」
ロイがエドワードのタンクトップを脱がそうとするのを、エドワードが止めた。
「一人では無理だろう?」
「大丈夫だから」
「手当てぐらいはさせなさい」
「でも・・・」
「一人では替えにくいでしょ?手当てしてもらう方がいいわよ」
ロイの厳しい表情と、ホークアイの言葉に、エドワードは諦めたように体の力を抜いた。
「・・・怒んなよ」
「わかった」
ソファの背に体を預けて、ぽつりと呟く。
タンクトップを脱ぐと、包帯に紅い染みができていた。
それを見たロイの顔が険しくなる。
「傷が開いたのか?」
「少しだけ・・・」
包帯を取ると胸の真中に大きな傷、脇腹にも深い傷がある。擦れたような小さな傷は数ヶ所にあり、脇腹の傷からは血が滲んでいた。
ロイは息を呑むが、無言のまま手当てをすませると、ホークアイに薬を渡した。
「中尉、ありがとう」
「いえ、失礼します」
ホークアイは敬礼すると、部屋を出て行った。
「エド」
ロイはエドワードの隣りに腰を下ろすと、傷な障らないように抱き締めた。
「エドワード」
「ごめん、心配かけて」
「そう思うなら知らせなさい」
「見たくなかったんだ・・・アンタのそんな顔、見たくなかった」
「エド?」
「あーぁ、バレないと思ったんだけどな」
エドワードの言葉に怒りにもにた感情がロイを襲う。
体を離し口を開こうとして固まった。
エドワードが哀しげな顔をしていたのだ。
「エド?」
「笑った顔が見たかったのに」
「・・・」
「早く会いたくて、笑った顔が見たくて来たのに・・・バレてんだもんな」
エドワードが自嘲気味に笑う。
「君は馬鹿か」
「なっ!」
「君の不調ぐらい気付く」
「っ・・・ごめん」
「電話を受けた時は心臓が止まるかと思ったよ、その後も君が来るまで落ち着かなかった」
ほんとに心配かけたんだ
連絡をしなかったことが悔やまれた。
心配をかけたくなくて知らせなかった事が、余計に心配をかけてしまった。その事が無性に悲しくなった。
「怪我が治るまでは旅はやめなさい」
「・・・うん」
エドワードは、呟くようなロイの言葉に頷くと、その体に抱き付き胸に顔を埋めた。
髪を撫でる優しい手が心地よくて、いつしか眠りへと落ちていった。
あとがき
ありがちな怪我ネタです。悪あがきするエドが書いてて楽しかったですが、楽しんでもらえましたでしょうか?
仲の良い二人がやっぱり好きですね