わずかに零れた心2
「はい、報告書」
「ご苦労だったな」
報告書を渡すと、溜息と共にソファへと座り込んだ。
「だいぶからかわれたようだな」
「あ〜まいったよ」
「今のハボックは、ある意味怖い物無しだからな」
「あんな少尉は初めて見た」
「だろうな」
報告書を確認していたロイが顔を上げたと同時に、扉がノックされた。
「お茶をお持ちしました」
「あぁ、ありがとう」
お茶とお菓子を乗せたトレーを手にホークアイが入って来る。
「中尉、アルは?」
「フリュー曹長を手伝いに一緒に行ったわ」
「ハボックはどうした?」
「相変わらずです」
「まるで、ヒューズ中佐みたいだよな」
エドワードの言葉に、ロイとホークアイは苦笑を浮かべた。
「エドワード君、ゆっくりしていってね」
優しい笑みを残して、ホークアイは仕事に戻って行った。
「報告書に問題ないぞ、今回も収穫はなかったようだな」
「あぁ、なかなかな」
エドワードが苦笑を浮かべる。
「文献とか情報ない?」
お菓子を手にロイに訪ねると、机の引出しから1冊の本を出して来た。
「これはどうだ?」
差し出された本を受け取り表紙を見た。
「此処で読んでいいか?」
「構わんが、珍しいな」
「今この部屋出るとな」
エドワードが複雑な表情をする。
「ハボックか、確かにな」
ロイも苦笑する。
「しかし、君に好きな人がいるとは初耳だな」
「いちゃ悪いかよ」
「いや、君も人並みに成長しているんだと思っただけだ」
「なんか、含みがあるようだけど?」
エドワードの顔が僅かに引きつる。
「成長不足だとは言ってないだろ」
「誰が成長不良の豆つぶだとー!!!」
「そんな事は言ってない」
「くそー!」
悔しがるエドワードを楽しそうにロイが見ていた。
「鋼の、どんな人だ?」
「はぁ?」
ロイのいきなりの問いに疑問の声をあげる。
「君の好きな人だよ」
「なっ!」
真っ赤になったエドワードを見て、ロイが笑う。
「君が好意を持った人物とは、どんな人かと思ってな」
「アンタな・・・」
「好みを聞くぐらいはいいだろう?」
「オレの好みを聞いてどーすんだよ」
「どうもせんが、」
「はぁ〜どいつもこいつも・・・・」
「仕方あるまい、色恋沙汰に一番疎そうな君に好きな人と聞けばな」
「・・・優しい人だよ」
「在り来たりな答えだな」
「うっせーよ!!アンタこそどうなんだよ」
「私かね?」
「そう」
ロイが不敵な笑みを浮かべてエドワードを見据える。
「生意気で可愛いな」
「へ〜」
エドワードは意外な顔をする。
「何か以外だな」
「何がだ?」
「いや・・・アンタのことだから、落ち着いた人だと思ってたから・・・生意気なんて以外だなっと」
「そうか?」
「そう」
ロイが楽しそうに笑い、カップの紅茶を飲み干した。
「さて、仕事に戻るか」
ソファから立上がり執務机へと移動すると、書類を手に取り仕事を始めた。
エドワードも本を開き読み始める。
ペンと紙の微かな音だけの室内が、日溜のように暖かく優しい空気が満ちていた。
あとがき
何度も書き直して時間がやたらかかった話です・・・意味不明になっていないか不安です。