おはよう
まだ朝も早い時刻。
夜も明けきらぬ薄明るい光の中で、エドワードは一人橋の上にいた。
特に何をするでなく、ただ河の上に見える空を眺めていた。
ふと、目の端を掠めた見慣れた色に声をあげる。
「あれ?」
エドワードは目に写った人物に驚き、次いで顔を僅かにしかめた。
相手も気付いたようで、憎たらしい位の笑顔を向けてくる。
「おや、鋼のではないか」
途端にエドワードの顔が渋面を作る。
「あからさまに嫌そうな顔をするな」
「朝っぱらからアンタの顔見りゃ仕方ないだろ」
「随分な言いようではないか」
エドワードの嫌そうな顔に動じる風もなく、むしろ面白がるように言葉を掛ける。
「こんな所で何をしているのかね?」
「散歩の途中だよ」
「君が散歩?」
「悪いかよ!」
「悪くはないが、君のイメージではないな」
「ほっとけ!」
拗ねたように横を向いてしまったエドワードを、尚も面白そうに笑いを堪えて見ている。
「そんなに笑う事ないだろーが!だいたいアンタこそこんな時間に何してんだよ」
「私は残業が長引いてしまってな、帰宅するところだ」
「こんな時間まで残業かよ」
「少しは労ってくれてもいいだろう?」
「どうせ自業自得だろ?」
呆れたように見れば、ロイが肩を竦めた。
「確かにな、だが急な仕事もあるのだよ」
「急な仕事ね〜って、一昨日の爆破事件か?」
「知っていたのか?」
「こっちに着いたら凄い噂だったからな」
「いつ帰ってきたんだ?」
「あっ・・・」
気まずそうに口を噤むエドワードを、ロイが訝しげに見ている。
エドワードは諦めた様に息を吐いた。
「一昨日の夕方」
「昨日着いたのではなかったのかね?」
エドワードは明後日の方向を向いているが、顔は僅かに赤い。
「みんな忙しいだろ」
ぽつりと零された言葉に、ロイは僅かに目を見張る。
「私達を気遣ってくれたのかね?」
「・・・」
ロイが優しい笑みを浮かべる。
「ありがとう」
エドワードは顔を真っ赤にさせて、相変わらず横を向いている。
ロイはその姿を微笑ましげに見ていた。
「あぁ、鋼の」
「何?」
思い出した様に呼ばれてロイを見た。
「おはよう」
「は?」
いきなりな言葉に頭が付いていかず、間抜けな声をあげた。
「朝だろう?」
ロイの言葉に苦笑を浮かべると、いつもの笑顔でロイを見た。
「おはよう、大佐」
あとがき
お題1作目です。何故か緊張気味(笑)