隠しごと
ここは東方司令部。
いつもの指令室には、いつものメンバーがいる。
だけど空気が違った。
なんだ、この空気・・・
入口からして、いつもと違ったけど・・・ここは特に酷くないか?
空気が張り詰めているのだ。
その空気に、エドワードは扉を開けたまま固まっていた。
「よう、大将!」
「こんにちは、エドワード君」
「あっ、こんちは」
黙って入口に立ち尽くしていたエドワードに、ハボックとホークアイが声をかけた。
慌ててエドワードも返事を返す。
「なぁ、何かあったのか?」
誰とはなしにエドワードが聞くと、ハボックが無言で扉を指差す。
そこは、言わずと知れた大佐の執務室。
「どうかしたのか?」
「昨日から機嫌が悪くてな、恐くて近寄れねーんだ」
「・・・昨日なんかあった?」
「俺が気付いた時には、機嫌悪かったからな〜中尉は何かしらないっスか?」
「そうね、電話があったわね」
「電話?」
「えぇ、昼頃にね。大佐の様子が変わったのは、その後からね」
「・・・昼頃の電話って」
「心当たりでも有るのかよ?」
「・・・」
電話って・・・まさか
エドワードの額には汗が浮かんで、顔色も心なしか悪くなっている。
それを困惑の表情でホークアイとハボックは見ていた。
「・・・大将、何かしたのか?」
「・・・オレは何もしてない」
「でも、電話に心当たりが有るのでしょう?」
「電話・・・オレ帰るわ」
踵を返そうとしていたエドワードを、ハボックが捕まえる。
「大将、何か知ってるなら、大佐をなんとかしてってくれ!」
「やだ!」
「即答かよ!」
「オレになんとか出来るわけないだろ!」
「原因に心当たりがあるなら、対処も出来るだろ!」
「無理!」
「大将!」
エドワードはなんとかこの場を離れようともがき、ハボックは必死に引き戻す。
そんなやり取りを繰り返していると、エドワードが顔を僅かにしかめた。
っ!・・・まずい
「大将、どうかしたのか?」
先ほどより顔色の悪くなったエドワードにハボックが声をかけるが、それに返事を返す前に執務室の扉が開いた。
不穏な空気を纏ったロイがエドワードを見据える。
「あっ・・・」
「大佐!」
うぁ〜まずいって・・・目が完全に据わってるよ
エドワードの額から汗が伝う。
何とかして逃げないと・・・
「鋼の」
「・・・なに?」
「挨拶もせずに帰る気かね?それに報告書を持って来たのだろう?」
「そうなんだけど・・・その・・あれだ、大佐忙しいみたいだし明日にしようかなっと・・・」
大佐の纏う空気が険しさを増す。
エドワードの顔色は青さを増す。
「鋼の、報告を聞こうか」
「・・・わかった」
「では、こちらに来なさい」
エドワードは、諦めて執務室へと入って行った。
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