隠しごと2
「報告を聞こうか」
エドワードは、無言で報告書を差し出した。
ロイは、それを受けとり手早く目を通していく。
ロイは読み終わると、エドワードへと目を向けた。
「これだけかね?」
「・・・」
エドワードは微動だにしない。いや、出来なかったのだ。ロイの纏う空気に、ただ俯くだけ。
「鋼の?」
「・・・それだけ」
再度の問い掛けに、エドワードが何とか返事を返すと、ロイは無言で椅子から立ち上がり、エドワードの腕を掴んでソファへと連れて行く。
「座りなさい」
「なんで?」
「エドワード、座りなさい」
ずりぃ・・・名前を呼ぶなんて反則だ
エドワードは、渋々ソファに腰を下ろした。
「報告は、あれだけかね?」
「・・・そうだよ」
「エドワードとして、私に言う事はないか?」
「・・・」
「無言は肯定か?」
エドワードは、ただ無言で俯いている。
それに、ロイは諦めたように溜息をつくと、エドワードと目線を合わせるように屈む。
「見せなさい」
「・・・やだ」
「エド!」
エドワードは思いきり顔を背ける。
そんなエドワードの服を、ロイは脱がせ始めた。
「何すんだよ!」
「君が素直に見せないからだろう」
「やだ!やめろ!」
「おとなしくしたまえ!」
ロイの手がエドワードの上着をはだけると、タンクトップから下に巻かれた白い包帯が見えた。
「まったく、君のことだから包帯も取り替えてないのだろう」
「仕方ないだろ、包帯の替えなんて持ってないんだから」
呆れたようなロイの言葉に、エドワードはふて腐れたように返すが、内心ではかなり焦っていた。
「待ってなさい、中尉に薬と包帯を持って来てもらうから」
「いいよ、帰ってからするから」
「だめだ、包帯の替えがないのだろう?とにかくおとなしく座っていなさい」
包帯を替えたらバレちまう・・・
その時、扉をノックする音が聞こえた。
「大佐、お茶をお持ちしました」
「あぁ中尉、丁度良かった、すまないが薬と包帯を持って来てくれないか」
「薬と包帯ですか?」
「鋼のの手当てをしたいのでね」
「わかりました」
ホークアイはテーブルにお茶を置くと、エドワードへと視線を向けた。
タンクトップ越しでも明らかなほどの怪我に眉を寄せたが、エドワードを安心させるように微笑んだ。
「すぐに持ってくるわね」
ホークアイが執務室を出て行くと、ロイがエドワードに声をかける。
「何故言わなかった?」
「言いたくなかったんだよ・・・なのに、なんで知ってるんだ?」
「君を診た医者が連絡をくれたのだよ」
エドワードは内心で医者に悪態をつく。
「君は何故そう無茶をするのだね?」
「・・・無茶なんかしてない」
「入院が必要なほどの怪我で旅をするのは、無茶と言うのだよ」
「大した怪我じゃない、医者が大袈裟なんだよ」
「その様子だと、病院に行く気すらないようだな」
「病院に行く必要ないからな」
平行線を辿るような会話に、ロイが溜息をついた。
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